木暮医院院内報 2000年秋号

『食事と大腸ガンの関係』

今回テーマは「秋」です。今まで暑さで落ちていた食欲も戻ると同時に、実りの秋でもあるので、 おいしい物がたくさん手に入るようになり、いやでも食事の量も増えてきます。

 そこで今回食事と、最近増えてきていると言われる、大腸癌との関係について考えてみましょう。 近年の傾向として、男女ともに胃癌が減って大腸癌が増えてきています。そして大腸癌は食事との関係が 深い癌なのです。

 各国別に一人あたりの肉の摂取量と大腸癌の患者発生率を比べると、肉を食べれば食べるほど、その国の 大腸癌になる人は増えるのです。日本で大腸癌が増えているのは、日本人の肉の摂取量 が増加している事と 関係しています。

 大腸癌には、肉でも特に霜降りなど脂肪の多い肉が関係しています。 脂肪の多い肉を食べるとそれを消化するために胆汁の分泌が増えます。この胆汁の中の胆汁酸を大腸にすんでいる細菌が二次胆汁酸という発癌物質に変えるのです。 更に肉食が主体だと、食物繊維の摂取が減ります。

 食物繊維は二つの理由で、大腸癌の発生を防ぎます。一つは便を酸性にして、二次胆汁酸をつくる細菌を減らします。もう一つは食物繊維は消化されないので、食べれば食べるほど便の量 が増えます。便が増えれば 二次胆汁酸は薄まり、又便が増えれば、大腸での便の滞在時間は短くなり、二次胆汁酸が大腸を刺激する 時間も短くなるのです。二次胆汁酸の濃い便が長く大腸にとどまっていることが、大腸癌を起こりやすく しているのです。

 従って、大腸癌は食事に強く影響されます。折角の食欲の秋ですから、食物繊維の多い、きのこや野菜を 主体に、脂肪の多い肉はなるべく少量とるようにして楽しんでください。

もう一つこれはお願いですが、大腸癌は解ってわかる数少ない癌です。大腸の検査の時に 「どうせ痔だから」と言ってなかなかみせて戴けない場合があります。患者さんとしては恥ずかしいの でしょうが医者にとっては日常の検査のうちのひとつでしかないのですから、あまり嫌がらずに診察を 受けるようにしてください。
院長 木暮正美
2000 Autumn

2000年 10月発行


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