GigaSt v5を用いた簡易VSWR測定

測定原理

測定準備(用意するもの)
GigaSt v5、PC、方向性結合器、アッテネータ、ターミネータ、接続ケーブル、変換コネクタ(必用に応じて)

  ※目的は2.4GHzの無線LANアクセサリ等のVSWR性能を調べる事

1.測定環境 

 

PCとGigaStと方向性結合器

 

GigaStの入出力(TG OUT と RF IN) 
GigaSt はトラッキング・ジェネレータ(TG)が
付いているスペクトラム・アナライザなので
格安で極めて便利である。         

 
方向性結合器は 「ANAREN 10616-20」
  2〜4GHz   結合度: -20db
  (結合度が小さいほど主回路に影響しない)
  ※方向性結合器は進行波または反射波を選別
   する装置

アッテネータは「ヒロセ AT-100シリーズ」
  〜18GHz VSWR 1.15以下(4GHz)
  種類は1、3、6、9、10db
 

2.TGの出力設定 (進行波の電力設定)

 

          測定回路
  左図は進行波電力を測定する状態。
 反射電力を測定する場合は、方向性結合器の接続のINとOUTを入れ替える。
   方向性結合器のINにGigaStTG OUT、OUTにアッテネータ、-20dbにGigaSt のRF INを接続する。

 50Ωターミネータの代わりにアッテネータを使う。アッテネータは方向性結合器のOUTに近い方から、1,3,6,9,10dbをカスケードに接続する(ATT-100シリーズの性能は十分高いのだが、念のため)。

   GigaStTGモードにして、-20db出力を観測する。
    GigaStの観測領域を2450MHz±50MHz(2.4〜2.5GHz)に設定する。TGの出力は+10db程度なので、-20db出力端子で観測すると、-10dbm近くに見える。GigaStの水平カーソルを左のスライドバーで-10dbに置く。
    TGモード設定下の「FLAT」チェックボックスをON。観測値がカーソルに合わせられる。これでTGの進行波出力を(見かけの)-10dbmに設定した。
    ちなみに方向性結合器の-20db出力からケーブルを外すとこんな感じ。このレベルをGigaStのTGモードにおけるバックグラウンドと考える。

 3.(整合時)反射波電力の観測

  進行波電力をTGモーでフラットにした後、方向性結合器のINOUTの接続(ケーブル)を入れ替えることにより、反射波電力を測定できる。GigaStのTG出力は方向性結合器のOUTに、GigaStのRF INは方向性結合器のINに接続する。

 ※方向性結合器の入/出力の電磁気的対称性が優れていることを利用する。
 ※方向性結合器の-20db出力はGigaStのRF INに接続する。


 但し、(理想的な方向性結合器ではこのようなことは起きないが)現実的には接続する負荷によって方向性結合器でモニタする進行波電力が若干変化する。そこで、より精密に測定する場合は、負荷にショート、オープン、整合状態の三状態の平均値を用いて進行波電力をフラットに置き換えるべきである(平均値を用いなければ実測値で1〜3db程度の誤差が発生する)。今回の測定は簡易測定であり、負荷が著しく特性インピーダンスから離れていないことを前提にする。

 以下は、不整合時と整合時の反射電力が計測システム全体でどれほどなのかを調べた結果。
 (以下ATTはアッテネータの略)
     (不整合)
 ATT 4db:1db+3db

 反射波電力は進行波電力に対し、-9db〜-6dbといったところ。VSWRは2〜3程度。
      (不整合)
 ATT 10db:1db+3db+6db

 反射波電力は進行波電力に対し、-30db〜--36dbといったところ。しかし、これは異常。下の結果から見ると、計測システム全体の影響で何らかの共鳴または輻射が発生している模様。
     (かなり整合)
 ATT 19db:1db+3db+6db+9db

 反射波電力は進行波電力に対し、-29db〜-27dbといったところ。
     (ほぼ整合)
 ATT 29db:1db+3db+6db+9db+10db

 反射波電力は進行波電力に対し、-32db〜-28dbといったところ。以降10dbアッテネータの先に何を付けても変化はない。最良状態。この状態を計算すると、VSWRは1.08以下となる。

4.ターゲットのVSWR測定 

 上記のアッテネータの代わりに調べたいターゲットを方向性結合器のIN側に接続する。ターゲットはアンテナでもケーブルを接続した負荷でも良い。但し、このVSWRの意味は、方向性結合器の内部でのVSWRである。厳密に考えればケーブルに接続したアンテナの場合は、アンテナのVSWRではない。
   ターゲットに公称50ΩのSMAプラグタイプのターミネータを使ってみる。 
 2の作業でTGの出力をフラットにし、方向性結合器のINにターミネータ(ターゲット)を接続し反射波電力を測定する。
      反射波電力は-13db〜-15db程度である。以下の表計算(EXCEL)を用いると、VSWRは1.6以下程度であることが分かる。
 VSWR計算 :  VSWR.xls