mori1.jpg  森とオーケストラ 
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 あたたかい陽にさそわれて、みどりの日に群馬の森へ行ってきました。毎年4月29日には、ここで群馬交響楽団によるコンサート「森とオーケストラ」があるからです。さわやかな空気の中で聴くクラシックの調べはすがすがしく、それだけでも価値があるのですが、なんといってもこのイベントの目玉は聴衆が群響を指揮できる「メイ指揮者」のコーナーです。

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 今年も集まった人々の中から、司会者が5人を選びました。小学校4年生の男の子は、ベートーベンの「運命」を激しい棒の上下で指揮をしました。群響の面々もそれに答えて、真面目に演奏していました。小学校4年生の女の子も、「運命」に挑み、群響は微妙な棒のニュアンスに的確に反応して、テンポの揺れが大きく意外な進行をする曲を聴かせてくれました。めがねをかけた40代の男の方は、コンサートマスターの長田さんと握手をしてから始めるほど、マエストロに成りきってドボルザークの「新世界」を振りました。元気のいいお母さんも、旦那さんが一緒にこなかったから指揮ができたとのことで、「ボギー大佐」を悠々としたテンポで聴かせてくれました。最後の小学校6年生の男の子も、「ボギー大佐」を颯爽と指揮し、群響の面々も楽しんでいたようでした。

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 皆さん初めて指揮をなさるとのことですが、終わった後一様に「気持ちよかった」とおっしゃっていました。プロのオーケストラを指揮できる機会なんてないですから、それは、ほんとに気持ちいい体験だったでしょうね。小学生も、ここでの経験は一生思い出に残るでしょうし、音楽の道を目指す人が出るかもしれない。たとえそうならなくとも、クラシックへの愛着はいっそう増すことでしょう。

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 私自身も、小学校の体育館で群響の移動音楽教室を聴いた経験をかすかに覚えています。細かい演奏曲目などは忘れてしまいましたが、キラキラした金管の輝きが、新しい世界に誘ってくれたような思いが残っています。また、高校生の時の「芸術教室」で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を音楽センターで聴いた覚えがあります。そのときはあまりクラシックのことは知らず、もちろん生で初めて聴く曲目でしたが、果敢にピアノに挑むピアニストの姿が印象に残っています。それらは、現在、群響の定期会員になってクラシックに親しむきっかけになっていたのかもしれません。

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 子供の頃は、ふとしたきっかけで、様々な事に興味を持つものです。「移動音楽教室」「芸術教室」といった群響の活動は、子供たちに音楽の世界の広がりを自然と伝えてくれる素晴らしい行事です。これによって初めて生のクラシックに触れた方も大勢いらっしゃるでしょう。これほど地域に根ざしたオーケストラは数少なく、群馬県の貴重な財産だと思います。
 群響は海外公演などを通じてますます活動の幅を広げ、技術も向上し、子どもたちもより質の高い音楽にふれることができます。このオーケストラを持つことを一県民として誇りに思うと共に、子どもたちに音楽の豊かさを伝える群響の活動が永久に続くことを切に願っています。('97.5.5)


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