表紙あらすじで読む文学作品半落ち


  半落ち 横山秀夫 講談社

綿密な伏線。

 アルツハイマーの妻を絞殺した元警官。
 十年前に息子を骨髄性白血病で失っている。
 ドナーがいれば助かった。
 絞殺後、二日間の空白があり自首した。
 その空白をめぐって警察と検察の裏取引、さらには新聞記者との裏取引。
 新宿歌舞伎町へ行っていることが、警察の不祥事とつながると恐れたのだった。
 裁判官の一人もそのことをつく寸前で保身をはかり口をつむぐ。
 幸若舞の「人間五十年」の書が梶の遺書と目され、五十歳で自殺する恐れをうむ。
 刑務官は自殺阻止の監視を続けるが、志木から面会の申し出があり、手続き上違法行為の共犯となる。
 面会に現れたのは、梶に骨髄移植を受け命を助けられた青年だった。青年は梶に命を託した。
 ドナーは五十歳で失効するのだという。五十歳までもう一年生きて、もう一人だれかを助けたかったのだ。