表紙あらすじで読む文学作品半島を出よ


  半島を出よ 村上龍 幻冬舎


2011年、日本の経済は破綻し、預金封鎖とインフレ、失業率9%、ホームレスの増加、アメリカの衰退、中国の台頭、北朝鮮は南との統一を中国のあっせんで実現しようとしていた。
横浜にホームレスの居住区が出来、マフィアのNPOが牛耳っていた。そこには犯罪を犯した少年達が集まってきていたが、ノブエはその少年達の危険性を予知し、福岡の友イシハラのところに少年達を送った。
 北朝鮮は反乱軍という名目で特殊部隊を日本に送り、日本に独立国を建設するという計画をすすめていた。チャップリンの映画がヒントになっていた。始めはたった9人で福岡ドームを襲い、観客を人質に取った。侵略されたことのない日本人はみな信じず、電光掲示板の破壊を目の当たりに見た途端に従順になっておしっこをちびった。
 イシハラはこのテレビ中継を見て興奮した。参加したいという少年達に、おせっかいじゃないかという一言で思いとどまらせた。
 日本政府は最優先事項がわからぬまま、軍隊が入るに任せ、九州を封鎖してしまった。九州を見捨てたのだ。人質の命を守るということで、手も足も出なかった。
 北朝鮮軍は高麗遠征軍(コリョ)と名乗り、九州の銀行に口座を持ち、九州の巨悪の疑いのある人物を次々と検挙して拷問し、金を寄付させた。西日本新聞社の記者横川は、どのような法律的根拠で逮捕するのかと、最も核心に触れる質問をした。
 イシハラグループは高麗軍を滅ぼすことにし、武器を集める。暴発で一名死亡する。
 高麗軍は死者を土葬すべきか、火葬すべきかで悩み、女性アナウンサーの意見をきくことにする。
 医師の黒田は高麗軍に呼ばれて、伝染病かどうかの診断をきかれる。その帰りに地下室の拷問を見せられ、情報をもらすとこうなると暗黙の脅迫を受ける。
 高麗軍の公開処刑があり、医師の世良木が一人抗議する。少年兵のとき、中国で同じような場面で何も言えなかった後悔をずっと持ち続けていたからだ。
 イシハラグループは高麗軍のいる建物全体を崩壊させる計画を立て、建物侵入のために暴走族を利用する。培養した虫(ハエ、トビムシ)を放ち、高麗軍を予め遠ざけておいて爆弾をしかけた。
 暴走族が自慢げにしゃべったことを近所の主婦仲間から聞いた市役所の職員尾山知加子は高麗軍に告げ口する。高麗軍はすぐに建物点検を始め、イシハラグループはその点検する軍と戦う。
 キムヒャンモクは抗議した世良木に死んだ父の面影を見る。子どもを大切にしろと遺言した父を思い出す。遺言に背いて子どもを死なせてしまった負い目をもって、自殺覚悟で世良木と会っているときに、イシハラグループの爆弾が爆発し、高麗軍は全滅する。
 キムヒャンモクは世良木の養女となって、島の保育所で働く。
 生き残ったイシハラグループは自分たちが日本を救ったことは一言もいわず、もとの日常に戻る。