表紙あらすじで読む文学作品放課後の音符


  放課後の音符(キーノート) 山田詠美 新潮社
 Body Cocktail
 カナは十七歳。男の人とベッドに入ることを日常にしているが、妊娠して産むことを選び退学する。
 「他人同士があやういもので結ばれるのって、すごく繊細なことだと思うの。そうねお酒のカクテルみたいなものかもしれない」
 

 Sweet Basil
 リエは純一が好きでいつも遠くから見つめている。私は純一と幼なじみで気安く話せることを見せびらかしていたが、リエの目から逆に純一を意識し始める。
 「私からもローズマリーやタイム、スウィートバジル、そんな香りがするのだろうか」
 

 Brush Up
 帰国子女の雅美はアメリカンスクールに入ってやっと自分自身になれた。処女だがブロウジョブの知識もある。
 「私、自分の苛々の原因が解ったわ。足りないものは彼の体だったんだって。恋の段階が進むと心だけでは満足できなくなるのよ。今までの恋なんてまるでおもちゃみたいだったって思っちゃう」
 

 Crystal Silence
 マリは大人たちが眉をひそめるような女の子。なぜこんなにも綺麗になれるの?まだ十七歳。それなのにお酒も飲む。煙草も吸う。男の子と寝る。そして彼女は私のまわりの大人たちよりもずっと美しい。鐘のような涙を流すことのできる人間なのだ。
 「絵の中にいる人間は絵なんて描かないもんよ」
 「彼女はとても率直な女の子だった。誰にも媚びたりしない。だから誤解を招いてしまう。そう言う種類の女の子だった」
 沖縄で、口のきけない男の子と恋におちるマリ。
 

 Red Zone
 カズミとつき合っていた男の子は年上の女が好きになりカズミに謝る。
 カズミは当初ただ怒りにまかせていたが、相手の女を見て、口紅をつけただけの素敵な大人であることをみて、素直に負けを認める。カズミは姉の口紅をつけて男の子と決着をつけるためにキスをする。大人になり、素敵な女になってもう一度会いに来るという予約のキスだ。
 

 Jay-Walk(斜め横断)
 ヒミコは他の女の子の男にばかり手を出して奪ってしまい嫌われていた。
 ある時ジャンケンで代表で文句を言いに行くことになって、私が負けた。私はヒミコにつれられて化粧させられ六本木へ。上等とはハイヒールに靴擦れしないこと。
 「同じ年齢の女の子たちはだれもが似通った考えをもっていると思っている」
 「流行が行ったり来たりしている内ってすごくガキっぽいのよ」
 「ぺたんこの靴をはいてもいいけど、不自然を隠すための自然じゃ意味ないわ。足が痛くたって男の人に好かれるためにハイヒールをはく私のほうがずっと自然よ」
 「男に興味を持ちだしたってことは、女としての発情期が始まったってことよ。これっていやらしいことでも何でもないわよ。自然なことよ」
 

 Salt and Pepa
 カヨコ先輩と松山先生が放課後の音楽室でキスしているところを目撃する。
 「甘い過去を作るには恋ってものが必要じゃないか、それも塩辛くてスパイシーなやつ」
 

 Key note
 高3の春、恋のない不自然な私に幼なじみの純一が失恋を慰めてくれと言って近づいてきた。
 二人は関係を持ち、私は母の香水をつけている。
 「1000回こんなことを繰り返せるかしら。私は望んでいる。彼とこうすることで、1000個の素敵な記憶を落としていく。それが良い匂いの音符に変わり、私だけの音楽を奏でてくれることを」