表紙あらすじで読む文学作品次郎物語


  次郎物語 下村湖人 第一部 講談社

 次郎は教育熱心な母お民が、「孟母三遷」の教えにならって、校務員のお浜の家に里子に出される。猿のような顔で疎まれた面もある。お浜は我が子以上にかわいがる。五歳ころ実家の本田家に連れ戻されるが、それを警戒して何度も逃げた。実家では緊張で寝小便したり、兄のカバンを便所に落としたりのやんちゃをする。実母になじめない寂しさと、祖母による露骨な差別がゆがんだ行動を生んでいた。
 実父は次郎をかわいがって真正面から受けとめてくれた。
 母の実家正木家におつかいに行かされた。兄が怖がって逃げたので次郎が一人で行った。それから正木家によく出入りするようになり、祖父に気に入られる。
 学校では上級生にいじめられ、おさえつけられ、足をかんで傷つける。相手の親が乗り込んでくるが、父は毅然と応対する。
 そろばんがこわされていたことで次郎が疑われる。弟のしわざだったが、次郎は自分がやったと申し出て、すぐまた取り消す。
 校舎が移転になり、お浜は追い出され、遠くの炭坑町に引っ越す。
 医者の家の子の龍一と仲良くなり、その姉にあこがれる。姉は東京に嫁ぐ。父は人がよく男気が強いので金を他人に用立てたりして家が傾く。家財を売り、町で酒屋を営むことになるが、次郎は正木家に残る。
 正木家の婿は実直だが、無口で、次郎はなじめず反発する。実母が結核にかかり、療養のために正木家にやってくる。次郎は人が変わったように母に尽くし、勉強もする。
 母は次郎に心を開き、次郎にあやまりながら死ぬ。
 祖母は最後まで世間体を気にするだけだった。