表紙>あらすじで読む文学作品>「怯えの時代」
「怯えの時代」 内山節著 を読む 2009.11.3 たとえば、妻が死んだ後の喪失とその先にもたらされた自由が現代という時代である。 現実を受け入れることで成立する自由。「なぜ」と問うことを許さない現実。 量の拡大が行き詰っている現実をあちこちで見る。 食料問題は食料価格問題である。食料が足りないのではなく、食料が高くて買えない場所と安いから平気で食い残すことのできる場所があるということ。 悪の定義は時代によっても、またその人の立場によっても変化する。 富と名声を得ることを善とするアメリカ。それを恥ずべき悪と考え、よい仕事をして尊敬されることを善とするフランス。 短期的な善が長期的な悪に転ずるという構造。 経済発展という短期的善は環境破壊という長期的な悪をもたらす。 善の意味が短期的に変わっていく社会の中で生きている。 郵政改革が善だったのはつい数年前。多数派にゆだねることで自己を「失われた存在」へと落としていく。そのことによって自由に生きる自己を再確立するという生き方。 経済は生産流通消費の順ではなく、消費流通生産の順で形成されていく。 経済と経営の不調和、マクロ経済とミクロ経済の不調和。 個別経営を守るための人員整理が失業者の増大をまねき、経済を破壊していく。 この不調和を起こさせないためには、経済成長が拡大しつづけることが必要となる。 生産企業の流通管理企業化 経済の中心軸が生産から流通に変わってきた。 使用価値と交換価値 貨幣には交換価値はあっても使用価値はない。 使用価値は関係的価値である。 三つのシステム 資本主義的な市場経済。近代的な市民社会。国民国家。 共通点は自由な個人を基盤にしていること。 巨大技術や巨大システムは人間を無力化する。 冷たい貨幣と暖かい貨幣がある。 暖かい貨幣は人と人とがつながるときに使われる。その暖かさを求めて振り込め詐欺も成立する。 頼母子講、無尽講には温かいお金が使われる。 二十人程度の信頼できる人が集まって、たとえば一万円ずつ出資する。合計二十万円を融資してほしい人が入札する。一番低い金額を提示した人が落札する。落札した金額と二十万円との差額を出資者が分配する利息となる。利息は前払いであるから、サラ金のように巨大に膨らむことはない。 生命の結び合いが見られる連帯をつくることに今後の可能性を見る。
|