入門インテグラル理論
人・組織・社会の可能性を最大化するメタ・アプローチ
日本能率協会マネジメントセンター
インテグラルとは、包括的、統一的、必要不可欠ということ。
必要不可欠なことに着目する。
統合的な思考をするための必要条件に留意して、もっとも効果的・効率的に探究する方法を習得する。
インテグラル理論は、ケン・ウィルバーという一人の思想家によって生み出されたことを契機に、発展していったものです。
ウィルバーの日常は、まず日課として、午前3時か4時に起床した後、1時間か2時間は瞑想し、午前6時から午後2時まで机に向かいます。それから1時間ほどウエイトリフティングをして、用事を済ませ、午後5時に夕食、来客への接待や手紙の返事などをこの間に行い、午後10時には就寝するのだといいます。
執筆の準備のための研究の段階では、1日に3〜4冊の本を拾い読みしながらメモをとり、良書には3〜4回目を通すそうです。そして1年のうちに何百冊かの本を読むうちに、執筆内容がひとりでに頭の中にできあがり、2〜3か月をかけて、その内容を文字に定着させていくのです。
ウィルバーは、今日において、精神的霊的スピリチュアルであることは、「政治的」であることを要求する、という旨の発言をしています。
そうした発想は、世界というものは、すなわち「自己」そのものであるという叡智の伝統の洞察を端的に表したものと言えます。
ウィルバーが著作やインタビューにおいてしばしば強調する言葉に、「すべては正しい。しかし、部分的である」というものがあります。
真の多様性「垂直的多様性」とはどういうことか
人間というものが、意識的な努力では容易に克服できない構造的な限界にとらわれた存在であることを認識するということ。
共同体とは、このように意識的な努力では克服できない認知的な限界にとらわれた多様な人間が共存している場といえます。
そして、垂直的な多様性を認識するとは、容易には共有できない多様な「光景」(世界観)を見ている多様な人間が共存していることを理解するということです。
それはとりもなおさず、真の意味で相互に分かり合うことのできない多様な人間が共存していることを認識するということに他なりません。
統合的な発想とは、そのことを前提としながら、共同体が「重層的存在」という全体としてどう調和することができるのかを探究するものと言えます。
インテグラル・リーダーシップを実現する三つの基礎能力
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組織の重層性を把握する
A
機動力を鍛錬する。「驚き」に自らの存在を開くことで、世界観を広げる。
B
それぞれがもつ叡智を紡ぐ。共同体を恣意的に変化させたり、進化させたりすることではなく、そこに重層的に存在しているそれぞれの行動論理が健全なものとなるように、条件を整えることなのだ。変化はそこに存在する無数の条件が積み重なることで、結果として生まれるものでしかない。
ナチス・ドイツの例を挙げて、「社会そのものが狂気に覆われたときには、そこに適応することは果たして善といえるのか」とう問いを立てることができる必要がある。
発達段階が高いことは必ずしも善ではない。