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息子の結婚披露宴の両家代表挨拶 全文 2018.2.10


 

結婚というものが個人対個人のものとしてあり、家と家との結びつきでなくなったわけですから、私は両家の代表というよりも単純に今日ここに結ばれた二つの魂に心から祝福をささげたいと思います。
おめでとう。
この広い世界で二人が出会うのは本当に奇蹟のようですが、実は奇蹟でも何でもなく、実は最初から決まっていたと考えることもできるのです。
つまり、この結婚が偶然ではなく、すでに生まれる前から決まっていたということを証拠立てるのが、たくさんの偶然の一致です。
私たち夫婦と新婦のご両親の結婚した日が全く同じであったこと。日にちだけでなく、本当に同じ年の同じ日にほんの目と鼻の先で同時に結婚式をあげていたという偶然。年齢構成も全く同じという偶然。
私の母と新婦の誕生日が同じだという偶然。
新郎のお祖母ちゃん(私の妻の母親)の誕生日と新婦のお祖母さんの誕生日が同じという偶然。
さて、この偶然の一致の確率はどれくらいでしょうか。
ユングという心理学者が意味のある偶然の一致をシンクロニシティと呼び、人間は無意識の世界でみなつながっているのだと考えました。集合的無意識といいましたが、つまりそれはすべての人は魂でひとつにつながっているということです。この世ではないあの世で魂はつながっているということです。
人は死んだら終わりじゃないし、何度も立場を変えて生まれ変わって来て、この世で魂を磨くためにさまざまな試練をのりこえるということです。
「つまづく石でもあれば私はそこでころびたい」と言った詩人がおりました。尾形亀の助という私の好きな詩人ですが、人は生まれる前に自分でつまづく石を置いて生まれてくるというのです。
新郎について、そのつまづく石は何か、といえば、
それは、大学受験に失敗し、どうしていいかわからなくなって、家に寄りつかなくなって友だちの家を泊まり歩いて、久しぶりに帰ってきたと思ったら、髪の毛を茶髪にして帰ってきたあの頃でしょう。柔道しかしないで、勉強を一切しなかったのだから大学なんて受かるはずはないのですが、それでもその現実にきちんと向き合えなくなっていた新郎に対して、私は、父親としての出番はまさにこの時だと思いました。そこで、私は今すぐ家を出ていけと言いました。私は本気でそう言いました。大学のために貯金しておいたお金があるから、それを全部やるからそれを持ってアパートでも何でも借りて一人で生きていけと言いました。
新郎は信じられないという顔をしておりましたが、結局家を出ることなく一年間その後新聞配達をして自分の進路を考えたようです。一年後、新聞配達は一生の仕事にはできないといい、公務員になりたいから一年間勉強させてくれと言いました。そうして一年勉強して今こうしてみなさんにお世話になっているというわけです。
この人生に大切なことは何かということを新郎は教えてくれました。それは学歴でもなく、地位でもなく、お金でもなく、自分の目の前の課題から逃げないということです。私は自分の息子ですが、そこは本当に尊敬しています。
この度、結婚によって新しいステージに立ちました。これからも起こるべきことは起こってきます。すべてを引き受けて逃げずに向かっていってくれると信じています。
ご列席のみなさまにおかれましても、またいっそうのご指導ご支援をお願いしてお礼のあいさつといたします。本日は本当にありがとうございました。