インサイド介護保険 その9

早いものでもう二月です。要介護認定もおおむね順調のようで、すでに「結果」をお持ちの方も多いことと思います。しかし、認定取ればそれでOKとはいかないところが介護保険。「その6」で書いたように、介護保険ではケアプランに基づいたサービス提供が前提です。要介護認定がでたら、次にやるべきはケアプランの作成です。

介護保険は利用者本位が「建前」です。だから、介護サービスの選択は利用者の自由であるというのが「建前」。ケアプランも、自分で作ってもいいしなくてもいいというのが「建前」です。こういうことは、多分多くの介護保険のパンフレットや解説書にかかれていることでしょう。しかし、本当にそうでしょうか?

まずケアプラン「なし」ですが、これはほとんどあり得ません。というのは、ケアプラン「なし」では償還払いとなるからです。償還払いとは、はじめに全額払って九割の還付を待つという制度です。一時的とはいえ支払う額は大きいし、いつ還付されるかもわからないですから、資金の調達が大問題です。医療保険の「高額療養費」もある意味では償還払いで、この場合はそれ専用の「つなぎ資金融資制度」があります。なあ~んだ、介護保険だって同じじゃん … いえいえ、そもそもフツーにケアプランを作れば生じ得ない問題ですから、面倒なつなぎ資金なんかだーれも準備してくれませんよ。

ついで、ケアプラン「自作」こちらはどうでしょうか?自分でケアプランを作る場合は、サービス提供業者との連絡・調整も自分でやらなければなりません。な~に、気心の知れた業者さんだから楽勝だろう … いえいえ、この他にまだやることがあるんです。それは「給付管理業務」で、実のところ、業界筋ではケアプランの作成そのものよりも大変だろうと目されています。

「給付管理業務」というのは、早い話がサービス計画とサービス実績の突合せで、その中身は、サービス利用票、サービス提供票、給付管理票という三種類の書類の管理です。ケアプランが「業者委託」ならばこれらもすべて業者の仕事ですが、「自作」の場合は市町村との共同作業となります。問題は、果たして市町村が給付管理業務の面倒を見てくれるだろうかということです。仕事なんだから当然だろというのは正論ですが、市町村にしてみればケアプランが自作の場合のみに生じる業務であって、つまり「フツーはやらなくていい仕事」です。となれば、おそらくあんまり快くは引き受けてもらえないでしょう。「次からは、居宅介護支援事業者に依頼してください」って言われるのが関の山です。

こんなわけで、残念ながら選択の余地はほとんどありません。あれこれ考えず、最寄の居宅介護支援事業者にケアプラン作成を依頼してください。

「しぶかわ」でないならば、渋川でない … 対偶も真ね。


「くらしと医療」2000年2月号


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