インサイド介護保険 その10

おかしいところには事欠かない介護保険、今回はやり方如何で自己負担が段違いになる例を紹介しましょう。

介護保険は、かかった費用の九割を面倒見てくれる制度ですが、もちろんいくらでもというわけではありません。この上限は「区分支給限度基準額」といい、介護サービスの種類と要介護度によって決まります。支給限度「額」といいますが、ショートステイなどの場合だとこの「額」は「日数」で定められています。

介護保険下では、ショートステイは概ね一日一万円です。支給限度基準額の範囲内ならば九割を保険が持ってくれますから、最低一日千円、最高一万円でショートステイが利用できることになります。ショートステイの支給限度基準額は、要支援の方で「六ヶ月あたり七日以内」です。これは月割りにしてもよくて、その場合は「日数を六で割って端数切り上げ」となります。

では問題。要支援の認定を受けた方が、毎月六日間のショートステイを利用する場合の自己負担額はいくらでしょうか?

まず基準どおり、つまり「半年で七日」で考えるとこうなります。はじめの月は六日間まるまる保険の範囲ですから、自己負担は六千円。翌月は一日分は保険がきいて千円、後は保険外で全額自己負担だから五万円の計五万一千円。残りの四ヶ月は六日間まるまる保険外だから六万円。つまり半年で計二十九万七千円、月平均で四万九千五百円支払うことになります。

勘のいい方はお気づきでしょう。そ、支給限度管理を月割りにした方が自己負担は減るんです。半年で七日ですから、一ヶ月では切り上げて二日が支給限度額!かくて各月の負担額は四万二千円!!毎月七千五百円もお得ですぞ。

給付管理としてはどちらも正しい方法なので、自己負担の多い少ないはいわば腕次第です。心配なのは、差額分をこっそりポケットに入れちゃう輩が出て来ないかってこと。それとも、あらかじめそういう不正ができるようにしておいたってことかい、更生しようさん。


※ その後、実際に介護保険がスタートしてから判明したところによれば、支給限度管理は要介護認定の有効期間とリンクし、有効期間は利用者の裁量では決められないことから、以上のような方便は不可能でした。お詫びして訂正いたします。


「くらしと医療」2000年3月号


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