インサイド介護保険 その11

介護保険はちょっとしたブームですね。しかし、新聞やテレビを観ても、あるいは書店に平積みになった「解説本」を読んでも、肝心なところはおそらくわからないでしょう。これにはもちろん理由があります。一つには、いろいろな決め事がとにかく遅れたこと。また一つには、もともとの地域格差を無視して全国一律を強行したこと。いうまでもなく、これはどちらもお上の責任です。今回は前者を取り上げます。

介護保険になると、一般にサービス利用者の自己負担は増えます。何もしなくても保険料分は増えるし、いざ保険を使えば原則一割の個人負担が課せられます。ここまでは誰もが唱える一般論。ところが「では、私はいくら払えばいいの」となると、答えられる人はぐっと減ります。そりゃそうでしょう。だって計算法はなかったんですから。

サービス利用料がきちんと計算できるようになったのは、本当にごく最近のことです。群馬県では利用料計算の講習会が二月上旬に行なわれましたが、その後もいろいろが変わること変わること。結局、支援センターしぶかわが最終的に用いた資料はなんと三月九日付でした。介護報酬、つまりサービスの料金表は確かに一月下旬には発表されましたが、これだけでは全然情報不足です。必要なすべての情報が出揃ったのは、実に三月の二十日過ぎです。

こんな状況ですから、サービス利用料の計算は一般の人にはまず無理ですし、ケアマネージャだって細部まできちんとできる方は少数です。専門家からしてこうですから、コンピュータのプログラムなんてもちろんありません。正規のケアプランは料金明細書付ですから、サービス利用料の計算ができなければ、ケアプランは完成しない。三月末にケアプラン作成の遅れが騒ぎになりましたが、何のことはない、遅れたのはお上の準備の方であって、そのつけが民間の居宅介護支援事業者に回ったに過ぎないのです。

それでも、多くの居宅介護支援事業者が、涙ぐましい努力でともかくケアプランを間に合わせました(パチパチ)。で、もう一方の当事者であるお上は何をしたかというと、四月については料金明細なしの簡易ケアプランを認めると決めました。利用料もわからない見切り発進にGOサインを出したってわけだ。オイオイ、どっちが国民の味方なんだい。


「くらしと医療」2000年4月号


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