99%の確率パート2

カルテの話は一休みして、今回は軽い話題で行きましょう。

何かにつけて、すぐ「99%の確率で...」なんて言う人いませんか、、、という書き出しで、平成10年11月号に大腸ガン検診を取り上げました。おぼえていらっしゃいますか?あのときの99%はこうでした。

大腸ガン検診では、異常ありの人のおよそ4%にガンが発見されると言われている。1997年の北毛病院の人間ドックで「異常あり」は45人。すると、この45人からの大腸ガンの発生は5人以下であると、99%の確率で予想できる。

今回の99%は、あの文の結びに関連します。

この異常あり45人のうち、22人の方が精密検査に見えました。幸いこの22人の中には大腸ガンの方は0人でした。

さあ、ここで素朴な疑問です。 「4%ってのは、25人に1人の割ってことでしょ。だったら、22人も調べて一人も見つからないってのはちょっとおかしいんじゃない?」

4%は確かに1/25ですが、それは「25人いれば確実に一人いる」という意味ではありません。この場合の確率は、あくまで「異常ありといわれたその人個人」に対する指標です。それをそのまま「異常ありといわれた人たちの集団」に当てはめるのは誤りです。

異常ありの人に大腸ガンが発見される確率が4%のとき、「発見されない確率」は96%です。すると、精密検査を受けた一人目にガンが見つからない確率は96%(0.96)、二人続けて見つからない確率は92%(0.96×0.96)、三人続けて見つからない確率は88%(0.96×0.96×0.96)となります。この調子で計算していくと、22人が精密検査を受けてもガンが発見されない確率はおよそ41%(0.96×0.96×0.96×.... 0.96の22乗)、つまり、たいして珍しい出来事ではありません。ですから「特におかしいことはありません」

計算を続けます。45人全員調べてもガンが発見されない確率はおよそ16%(0.96の45乗)です。言い換えれば、45人調べても見つかる確率はたかだか84%ってこと。56人でようやく90%、73人で95%となります。それでは、ガンを99%の確率で発見するには何人調べればいいか?答えはこうです「異常ありの方112人の精密検査を計画すべきです」

「病気がわかると嫌だから」という理由で精密検査を忌避される方がおられますが、それは多くの場合杞憂です。しかし、一方で「異常ありだってどうせ96%は大丈夫なんだから」とへんな自信を持たれても困ります。大腸ガンの自然発生率に比べれば、4%というのはきわめて高い数字です。異常ありの方におかれましては、至急精密検査を受けていただくよう、この場を借りてお願い申し上げます。


「くらしと医療」2001年6月号


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