カルテ開示元年に寄せて PART5

今回から、実際にカルテを読む場合のあれこれを紹介します。

カルテには数字、多くは横文字の医学専門用語、そしてその略語がたくさん出てきます。もちろん日本語も書いてありますが、肝心なことは数字や横文字で表現されていることが多いです。だから、カルテ攻略の第一歩は、横文字医学専門用語の理解です。まずは簡単なところから始めましょう。

外来の診察カルテには、大抵の場合その日の血圧と脈拍を記録します。病気によっては体重や体温も記録します。これらはすべて数字で表現される量ですが、では、実際にはどう書かれているか思い出せますか?

血圧とは「動脈にかかる圧力」のことです。血圧計で測定し、結果は最高血圧と最低血圧の2つの数字の組になります。脈拍とは一分間の脈の数で、結果は数字1つです。自動血圧計ではこんな感じに示されます。

最高血圧 140mmHg
最低血圧  70mmHg
脈拍数   80bpm

同じことを、カルテでは実にシンプルに記載します。体温が36.5℃とあわせてこんな感じ。

BP 140/70
P 80/min
KT 36.5℃

この「BP」だとか「P」だとかが、つまり「横文字医学専門用語の略語(のいちばん簡単なやつ)」です。それぞれ「blood plessure」と「pulse」という英語を略したものです。

カルテによっては、「BP」が「BD」になっていることがあります。これは「BlutDruken」というドイツ語を略したものです(正確にはDrukenのuはウムラウトで点々が上につきます)。実は、体温の「KT」もドイツ語の略語です(Korpertemparature、oはウムラウトでやはり点々が上につきます)。英語ならば「BT(body temparature)」ですが、北毛病院・北毛診療所ではもっぱら「KT」が使われています。

このように、カルテの横文字には、しばしば英語とドイツ語が混在しています。もちろん日本語も書いてあるし、さらにはラテン語まで書いてあることがあります。和洋折衷というか玉石混交というか、とにかく何でもありです。となれば、あえて「横文字」を意識してびびる必要はありません。「これは、血圧とか体温とかを意味する『記号』なんだ」と思えば、カルテはずっと気楽に眺められるはずです。

実は、略語のみならず、医学の専門用語そのものだって「単なる記号」と見なせる場合が少なくありません。次回はここらへんの事情をお話します。


「くらしと医療」2001年7月号


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