カルテ開示元年によせて PART7

今回からは、カルテの中身そのものを読む話です。正確には「カルテの中身そのものと私が考えているもの」ということになります。私は医師ですから、自分が書くところがカルテの中身だと思っています。もちろん、カルテには医者が直に書かない部分もいっぱいあることは、皆さん先刻ご承知のことと思います。

カルテの中身で中心となるのは日々の診療の記録です。診療のとき、医師は二号用紙という真中に縦線が一本入った独特な罫紙に記録をつけます。いわゆる診療の記録は縦線の左側に記載し、縦線の右側には診療行為、つまり代金を請求できるものを書くきまりになっています。法律ではカルテの書式について細かい決まりはありませんが、概ね以上のような書式を踏襲している医療機関が多いようです。

日付印から次の日付印までが一回の診察分です。内科のカルテでは、一回分は高々数行から半ページ程度のことが多いです。ただし、外来カルテは年単位で使いますから、全体としては結構な量になります。北毛病院と北毛診療所の場合、今の外来カルテは二千年一月からのものですから、既にだいぶ厚いカルテになっている方もおられます。

ここまではどのセンセイでも同じです。ここから、つまり実際に何をどう書くかについては各々でかなり違います。だから、ここからの話は、基本的に「私が書くカルテ」についてのものとなります。「私のカルテはここに書いてあるのとずいぶん違う」と怒るなかれ。それが医師の裁量というものです。

日々の診療の記録は、大きく三つの要素からなります。一、主観的な(subjective)情報、二、客観的な(objctive)情報、三、評価(assessment)と治療計画です。横文字を併記したは理由があります。カルテでは「S)」のように、各語の頭文字に片括弧をつけて見出しの代わりにするのです。実際のカルテではこんな感じになります。

2001.09.05
BP 128/80
S)  ハイ、変わりありません。
O)  P 72/min regular
    conj
    chest OK
A)  good

S)のところには、患者さんが診察室で実際に話したことを書きます。O)のところには、診察所見や検査結果の要点を書きます。A)のところには、上記S)O)を踏まえての評価を書きます。上の例では、自覚症状不変、診察所見も異常なし、評価はgood(良好)というわけです。

以上がカルテ記載の基本的なスタイルです。次回以降さらに詳しく見ていくこととしましょう。


「くらしと医療」2001年9月号


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