カレーをたべるゾ

カルテの話はもう一回お休みします。

「美味しんぼ」にカレーに漢方胃腸薬をかけて食べる話がでてました(小学館ビッグコミックス「美味しんぼ」24巻「カレー勝負<3>」)。市販されている胃腸薬には「生薬」と称していろいろな「スパイス」が配合されています。それゆえ、漢方胃腸薬をカレーにかけてみる(あるいは混ぜてみる)という発想はまんざらでもありません。ただし、実際にやるには相応の予備知識が必要です。

まず、カレーのスパイスのすべてが、胃腸薬に含まれているわけではありません。これはつまり、胃腸薬だけではカレーは作れないということで、ま、これは当たり前ですね。

カレーは様々なスパイスを組み合わせて調理します。例えば「森枝卓士の『カレー三昧』(雄鶏社)」で紹介されている基本のスパイスは、シナモン、クローブ、カルダモン、クミン、コリアンダー、黒コショウ、トウガラシ、ターメリックの八つです。

このうち、シナモンとクローブは、それぞれ桂皮(ケイヒ)と丁字(チョウジ)という生薬で、いろいろな胃腸薬に含まれています。また、ターメリックは鬱金(ウコン)ですから、単独で市販されています。一方、カルダモン、クミン、コリアンダーを含む胃腸薬は、ざっと探した限りでは見つけることができませんでした。黒コショウ、トウガラシは言わずもがなです(ただし、温シップにはトウガラシエキスが含まれています)。

さらに、胃腸薬には、必ずしも「スパイス」とはいえない生薬や、生薬以外のものが含まれているものがあります。というよりはむしろ、そういうものの方が多数です。そりゃあ、もともと「薬」なんですから、これも当たり前ですね。

市販医薬品の成分はいろいろな方法で調べることができます(医療機関にお勤めの私は、この点ではかなり有利です)。例えば、「太田胃散」はシナモンとクローブ以外にも、ナツメグ、フェンネル、陳皮といった「スパイス」を含んでいます。これだけならば、立派な(?)スパイス・ミックスです。ちなみに五つもスパイスがそろう「おくすり」はそうざらにはありません。しかし、残念ながら(?)太田胃散にはさらに、ゲンチアナ末、ニガキ末、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成珪酸アルミニウム、ビオヂアスターゼが含まれています。だから、これをかけてもお味の方はちょっと、、じゃないかなぁ。

とりあえずの結論。生薬のみで構成されている胃腸薬を探し(実際、そういう胃腸薬もあります)、足りないものは我慢するか本物を使うかすれば、いまより美味しいカレーが食べられる、、かも知れません。

最後に一言。お試しになるのは自由ですが、自己責任でお願いします。「家中から総スカンをくった」とか「カレシにフラれた」とかなっても、当局は一切関知致しませんので念のため。


「くらしと医療」2002年6月号


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