カルテ開示元年に寄せて PART15

引き続き、S)O)A)P)のO)の話です。今回は、診察所見のもう少し細かい記載法を取り上げます。

診察法には、視診(見る診察)、聴診(聴診器で聴く診察)、触診(手で触る診察)などがありますが、診る部位によって大体やり方が決まっています。また、科によって診方がさまざまに異なります。以上を踏まえて、内科外来の場合を説明します。

内科の診察にはいろいろな流儀がありますが、基本は上から順です。目を見て、のどを見て、首を触って、胸の音聴いて、横になってお腹の診察、、、という具合です。もちろん、自覚症状によっては端折ったり、あるいは他の部位を診たりもします。

目の診察では、目そのものを診るのではなく、白目とまぶたの内側を診ます(視診ですから「見ます」でもいい)。ここは目の周りの皮で、結膜といいます。さらに白目の方は「眼球結膜」まぶたの内側の方は「眼瞼結膜」といいます。眼球結膜では黄疸の有無を、眼瞼結膜では貧血の有無を見ます。当然ながら、正常では黄疸も貧血もありません。余談ですが、医療生協の健康チェックにある「あかんべチェック」は、眼瞼結膜の自己チェックを意図したものです。

カルテ上は、眼球結膜を「Conj. bul(Conjunctiva bulbiの略、ラテン語です)」眼瞼結膜を「Conj. pal(Conjunctiva palpiの略)」と横文字で書きます。所見も横文字で、黄疸は「icterus, icteric」貧血は「anemia, anemic」です。正常ならばこれらが「ない」わけですから、否定の「no」とか「not」がつきます。一応、名詞にはno、形容詞にはnotと使い分けます。つまり、「no icterus」「not icteric」「no anemia」「not anemic」とやるわけです。ただし、文法的な根拠はよくわかりません。異常の場合は、noやnotをつけずにそのまま書けばいいわけですが、それでは目立たないし程度がわからないので、アンダーラインをしたり+印をつけたりします。

のどの診察も基本的に視診です。のどが赤いか、扁桃の具合はどうかなどが観察のポイントです。というか、のどを見るのはそういう時が多いです。のどの場合、どういうわけかカルテにはまず「のどの絵」を書き、そこに所見を記入することが多いです。

のどは「throat」です。赤い時は、そのものずばり「red, redness」と書いたり、「injected(充血している)」と書いたりします。さらに、ちょっとの時は「slightly(さらにこれを略して「sl.」と書いたりする)」ひどい時は「severe」とか「markedly」などと加えます。

扁桃は「tonsils」です。腫れているときは「swelling(後ろに+印をつけることもある)」、膿がついているときは「pus+」などと書きます。余談ですが、扁桃腺というのはシロートで、正しくは扁桃です。扁桃は何も分泌しないので腺をつけるのは誤りです。

次回に続きます。


「くらしと医療」2002年9月号


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