皆さん、明けましておめでとうございます。
前回までで、S)O)A)P)のO)までは一応終わりました。残るはA)とP)です。A)は「診察所見(もちろん問診や検査結果も含みます)やこれまでの治療過程に対する評価(アセスメントのA)」、P)は「治療計画(P)はプランのP)」です。いずれも医者の頭の中のことを書くべき項目であることがポイントです。
S)やO)に比べ、A)とP)の区別は曖昧で、この二つを一緒くたに書いてある(あるいはP)を書かない)カルテが結構あります(私もそうです)。これには私なりにいくつか理由がありますが、まずは実際の記載例を見ておきましょう。
A)カゼ インフルエンザの可能性あり 一応インフルエンザを想定した治療とする 全身症状強いので補液するインフルエンザっぽい方のカルテで、比較的、アセスメントとプランの区別がわかりやすい例です。先の二行がアセスメント(この場合は病名・診断についてのアセスメント)、後ろの二行がプラン(この場合は治療方針)です。しかし、わかりやすいといっても厳密に考えるとわからなくなってきます。例えば「全身症状強いので」というのは、アセスメント(病状についてのアセスメント)ですね。もう一つ見てみましょう。
A)やはり血圧高め 内服↑すべきか? → 少し待つ高血圧の方のカルテです。この場合、まん中の「内服↑すべきか」が問題です。これはアセスメントでしょうか、プランでしょうか。これはつまり、治療プランについてのアセスメントですから、多分どっちに書いてもいいのでしょう。しかし、こうやってまとめて書いておくほうが、少なくとも私にはずっとわかりやすく感じます。形よりも、そのときにどんな風に考えたかを後になってふり返れることの方が大切です。だから私は、あえてA)とP)の区分で悩まずに、考えを一まとめに書いてしまいます。
A)DMコントロール不良 「インシュリンを考える時期にきていると思います」と説明糖尿病の方のカルテです(DMとは糖尿病のこと)。カルテには、実は医者が話したことを書く欄というのがありません。これは驚くべきことですが、世のエライ先生方はあまり不便を感じていないのか、いまのところ医学界で問題になっている風はありません。仕方がないので、A)の欄をこんな風に利用することがあります。S)の欄に患者さんが話したことを書くのと好対照です。ただし、もちろん話したことが考えていることのすべてではありません。
最後に3つ。
A)OK A)good A)stable高血圧や糖尿病などの慢性疾患では、治療が軌道に乗ったらあとは現状維持がベストです。だから、治療が上手くいっているときのA)P)は極めてシンプルです。代表選手がこの3つ。カルテにこう書いてあったら、記述の少なさを嘆くのではなく、治療はまずまず上手くいっているのだとご理解ください。
「くらしと医療」2003年2月号