注射の話

注射もいろいろありますが、医者が注射といったらそれは「点滴」です。

「点滴」の目的は、ズバリ「水」と「塩」の補充です。だから点滴の基本は食塩水です。「点滴で栄養を」とはよくいわれるところですが、実際は水と塩(とブドウ糖)を入れるためにやるのです。

医学では、血清と同じ濃度の食塩水を「生理食塩水(生食)」といって特別扱いします。人間の場合は0.9%(水1リットルに食塩9グラム。容量%です。)の食塩水です。

人間が一日に最低必要な水分は1.5から2リットル、塩分は食塩換算で3から5グラム程度といわれています。点滴の大きいビンは500mlですから、生食の点滴を一本やれば、一日に必要な塩分は大方まかなえます。が、水分としては全然足りないし、糖分が含まれないのでエネルギーつまり栄養はゼロです。そこでバランスよく補給するために、実際の点滴では生食をさらに何倍かに薄めて、さらに砂糖(実際はブドウ糖が多いが)とほかの電解質(カリウムなど)を混ぜたものを使います。

いちばんよく使われるのは、3倍か4倍に薄めてあるやつです。3ないし4本やれば一日に必要な水、塩(電解質)、および何がしかのエネルギーが補充できるように調整されています。

いわゆる「リンゲル」は塩を少し加減してカリウムとブドウ糖を加え、血清とほぼ同じ組成に調整された生食です。名前は有名ですが、やはり濃すぎるのであまり使われません。
スポーツドリンクも基本は一緒のようです。成分の組成まではなかなか書いてないのですが(私の知る限りでは1つだけです)、だいたい6倍ぐらいに薄めてあるようです。


「くらしと医療」1995年7月号


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