体温を計る

「正確に」体温を計るのは実はなかなか難しいことです。電子体温計を使ってわきの下で計る場合に注意すべきところをお話しします。
 


まずは体温計のはさみ方です。
 
 体温として計っているものは、わきの下の場合血液の温度です。
 わきの下には比較的太い血管が走っていますから、これに沿って体温計をはさむのが理想です。つまりなるべく腕に「平行に」はさむ方がいいのですが、これはちょっと難しいので普通は30~45度傾けます。武士が刀をさすようにはさんではだめです。これでは体温計の検知部と血管が交差してしまい、測定値が低く出たり、ピッと鳴らなかったりします。
 

ついで体温計をはさんでいる時間です。
 
 体温計に限らず、温度計で温度を計るには、温度計と温度を計られるものとが同じ温度にならないといけません((熱的な)平衡状態)。理論的には無限大の時間がかかりますが、体温計とからだに限ればまあ10分もあれば平衡になるといっていいでしょう。だから本当は10分かかるはずですが、実際は1分程度でピッとなります。これは体温計に秘密があります。  
 現在使われている電子体温計のほとんどは「平衡温予測式電子体温計」で、ある程度温度平衡に近づくと最終的な平衡温を予測して表示します。これが1分で計れる理由で、例の「ピッ」は平衡温の予測ができましたという合図です。予測はおおむね正確なんですが、本当にちゃんと計るにはピッの後もひきつづきはさんでおくのが正解です。普通10分ぐらいすると実測値(実際に計って得た平衡温の値)を表示するようになっています。
 

 過去に一般に行われていた体温測定は結構いい加減で、平熱がかなり低く見積もられていたように思います。きちんと体温を計ってみると、案外私の平熱は高かったということになるかもしれませんよ。


「くらしと医療」1995年9月号


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