石橋を叩いて・・・

「辞書は初版本は買うな」という諺があるそうですが、これは医療の世界にもあてはまるように思います。例えば薬です。

新しく開発されて一般診療でも使われるようになった薬に重篤な副作用が見つかって、結果として使用禁止になった、という例は過去にいくつか存在します。新薬の臨床試験というのは相当厳しい内容で、普通はこれをクリアしなければ一般診療では使用できません(注1)だからそういう薬に問題が見つかるというのは実は大変なことなのですが、現実にそういう事が起こっています(注2)有名なところではソリブジン、サリドマイドなどですが、有名になったものが話のすべてではありません。これ以外にも「やばいので発売中止」という薬があるのです。

ではどうするか? 多くの場合答えは簡単です。「緊急性がない限り初物には手を出さない」 宣伝になりますが、北毛病院は基本的にこの方針を貫いています。当院では、「画期的な新薬」は、それが画期的な新薬である間はまず使用されません。使われ始める頃には既に「新薬」でなくなっているのですが、見えないところで無用の危険を回避しているわけですね。


「くらしと医療」1996年4月号


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(注1)
これは一般病院での診療という意味で、大学病院などの研究機関には必ずしもあてはまりません。ただその場合は「そういう薬」を使用する旨をきちんと説明して、同意を得る必要があります。 (もどる)

(注2)
最近の「薬害」では臨床試験そのものの杜撰さが問題視されています(例えばソリブジン)。しかし、きちんとやってもやっぱりダメな薬もあるというのも事実のようです。 (もどる)