携帯電話について

 現在ほとんどの病院では、医療機器の誤作動の可能性を理由に携帯電話の使用を禁止しています。この文章は、こうした全面禁止に対する異議申し立てを意図しています。

 携帯電話にはアナログ、デジタル、PHSの3種類があり、それぞれ仕組みは全く違います。一方携帯電話との同時使用が問題視される医療機器は、心電図モニタ、輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器などの電子機器で、当院にもこうした機器が約20あります。

 医療用電子機器の誤作動は、確かに致命的な結果を招く可能性があります。その意味で全面禁止もごもっともですが、具合が悪いときほど連絡を密にとりたい、身近な人の声が聞きたいというのもまた人情でしょう。そして問題は、報告されている誤作動は、すべて「アナログ式携帯電話と医療用電子機器の同時使用によるもの」ということです。私の知る限り、実際に誤作動が確認されたのはこの組み合わせに限られます。デジタル携帯電話やPHSで問題が生じたとする報告はありません(下注)。全部が全部危険というわけでもないようなのです。

 そこで提案。きちんとテストして安全が確認された機器を病院が「貸し出しサービス」したらいかがでしょう。対象医療機器はたかだか20ですから、携帯電話が準備できればテスト自体はすぐできます。携帯電話のメーカー・販売店の皆様、ご協力願えませんか?

 なお、現状では機種を問わず「携帯電話の病院内使用はご遠慮いただいている」ので、誤解のないよう願います。電話を受ければ電波のやり取りは始まります。危険防止のためには、電話をかけないだけでなく、受けられないようにして携行していただく必要がありますので念のため。


注(1998.04.12added)
 その後、学識経験者、郵政省・厚生省等の関係省庁、病院関係者、電気通信事業者、関連工業会等で構成される不要電波問題対策協議会によって、かなり大規模なテストが行われました。結論から言えば、デジタル携帯電話やPHSでも誤作動を起こす場合がある、したがって、現状では携帯電話の医療機関内での使用は制限すべきである、となります。詳細はこちら「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」をどうぞ。


「くらしと医療」1996年7月号


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