なぜコレステロールが高いといけないか(その2)

 前回の話は少し誤解を招きそうな表現が多かったように思います。今回はそこら辺を踏まえてお話しします。

 コレステロールそれ自体は身体にとって必要不可欠のものです。最近でこそすっかり悪者扱いですが、ちょっと前までの日本ではコレステロールの摂取不足が問題でした。「コレステロールは毒だ」というのはオオウソで、とり過ぎるから毒なのです。

 コレステロールが高い状態が続くと動脈硬化が進みます。しかし「コレステロールを下げても動脈硬化は治らない」し、「コレステロール値をどんなに詳しく調べても病気の予知には使えません」。なんとも歯切れの悪い話ですが、コレステロールが高いのはよくないけれども「下げればもう安心」ではないし、「これを越えたら絶対ダメ」とか「ここまでは絶対安全」とは言えないのです。

 一般に脳梗塞や心筋梗塞のベースには動脈硬化があります。これらの疾患の治療法は確かに進歩し、救命できるケースも増えてきました。しかし病気それ自体が身体に与えるダメージはやはり相当のものです。しかも、いまのところ一度生じた動脈硬化をもとに戻す治療法はありません。

 動脈硬化は「予防するもの」です。絶対確実な予防法がない以上、危険因子は遠ざけねばなりません。コレステロール然り、タバコ然りです。自分の身体についての情報を集め、作戦を立てましょう。組合員健診も始まりますから。


「くらしと医療」1996年10月号


次のを読む
前のを読む


Indexにもどる
トップページにもどる