後悔先に立たず?後を絶たず??

前回、タバコ問題に関連して「成人病の自己責任論はけしからん」と書きました。しかし、これは「本来第三者であるべきところのお上が言うからけしからん」のであって、当然のことながら、患者さんには治療の主体者としての自覚と責任が求められます。

高血圧や糖尿病など、俗にいう成人病の治療には、定期的な通院と生活習慣の見直しが不可欠です。これには、患者さん自身が立ちあがらなければなりません。言うは易しで、実践には大変な努力を要します。

ここでいう生活習慣には、食事、飲酒、喫煙、運動、睡眠、労働などが含まれます。なかには致命的な悪習ももちろんありますが、圧倒的に多いのは「そうではない、そうでもない」まあ世間並と称されるものです。そういうフツーの生活習慣は、自覚症状に乏しい成人病治療においては実害がなかなか実感できない故、改めるのはなかなか難しいようです。

ましてや、疾病予防を目的に生活習慣を改める方は極めて稀です。時として予防は唯一の治療法なんですけどね。例えば、一旦生じた動脈硬化を元に戻す方法はありません。でも、だから禁煙に立ちあがったという人を残念ながら私は知りません。

成人病の多くは無症状のまま進行し、やがて一線を越えます。糖尿病のようにさまざまな自覚症状がでてきたり、高血圧を基礎に脳卒中や心臓病などの一大事が起こったりするわけです。こうなっては万事窮す。この期に及んであれこれの生活習慣を改めたとしても、残念ながら失なわれたものの多くは戻りません。

「後悔先に立たず」は、起きたことを後から悔やんでもしかたないのだから分別をもって行動せよという意味です。「後悔後を絶たず」はそれのもじり。後悔は後までずっと続くのです。


「くらしと医療」1998年5月号


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