ナノの世界

PCBが騒がれたころ、さかんにピーピーエム(ppm)という言葉がでてきました。ppmは100万分の1という意味です。

いまや時代はダイオキシン。今度はナノグラム(ng)とかピコグラム(pg)というのがやたらと出てきます。ナノは10億分の1(1/1000000000)、ピコは1兆分の1(1/1000000000000)の意味です。ですから、1ナノグラム(1ng)は10億分の1グラム(1/1000000000g)ということです。

さて、一口に10億分の1といいますが、これはどのくらいの量でしょうか?

50mプール(便宜上、縦30m,横50m,深さ2mとしましょう)に対して、コップ1杯(これも便宜上200ccとします)は何分の1に相当するでしょう? 答えは1500万分の1。プールとコップでは隨分と差がありますが、それでも千万のオーダーどまりです。料理用の小匙1杯(これは5ccですね)で6億分の1、ようやく億のオーダーです。ナノは10億のオーダーですから、これがいかに小さい量か御理解いただけますね。ピコはさらにその1000分の1です。日常的なものでは例を示すことすら困難です。

ダイオキシンはもともと農薬の不純物として知られていた物質です。今でこそダイオキシンの発生源といえば焼却炉ですが、少し前までは農薬などの化学工業製品が主たるものでした。どの農薬にどのくらいダイオキシンが含まれていたのかはもちろん解っています。そして、この農薬は日本でも使われていました。さらに悪いことには、某大国はアジアの某小国に兵器として大量散布しました。

枯れ葉剤には、不純物としてのダイオキシンが「ピーピーエム(ppm)」のオーダーで含まれていました。使用量は当然「トン(t=1000kg=1000000g)」のオーダーです。ダイオキシンは「ナノグラム(ng)」のオーダーで問題となるわけですから、この作戦の代償がいかに大きなものであるかは想像に難くないですね。


(補足)
1ppmのダイオキシンを含む物質1tには、1gのダイオキシンが含まれます。実際に使われた枯れ葉剤の農薬(およそ70000t)には2ppm程度のダイオキシンが含まれていました。また戦後、太平洋上で10400tを焼却処分しています。20kgのダイオキシンを公海上にぶちまけたわけですね。


「くらしと医療」1998年7月号


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