99%の確率

何かにつけて、すぐ「99%の確率で...」なんて言う人いませんか? 数字というものはあまり安易に振り回すべきではありません。少しきちんと考えてみましょう。

大腸ガンの検診は「便潜血反応検査」で行なわれます。この検査では、異常ありの人のおよそ4%にガンが発見されると言われています。昨年の北毛病院の人間ドックでは、45人の方が「異常あり」でした。この結果から、どんなことが「99%の確率で」予想できるでしょうか?

「4%は百分の四だ。ってことは100人いれば4人ってことだから、45人ならば2人弱くらいのガン患者がいたっておかしくないだろう」その通り。詳しい説明は略しますが、丁度何人発見されるかの確率を計算していくと、0人 16.6%、1人 30.4%、2人 27.3%、3人 15.9%、4人 6.8%、5人 2.3%と続きます。3人までの合計で確率90%を越えます。これは「この45人から発見される大腸ガン患者は3人以下である、と90%の確率で予想できる」という意味です。では、99%の確率での予想とはどうなるか。答えはこうです「この45人からの大腸ガンの発生は5人以下である」

予想に99%の根拠を与えるには、非常に広い安全域を見込む必要があります。その結果、予想の中身が漠然としてしまって、実用に耐えない場合が多々あります。この例も100人に4人がスタートですから、45人に5人というのは隨分アバウトな予想です。こんな予想なら当たるに決まってるから意味がない、とするのが健全な常識というものでしょう。

皮肉なことに、予想が外れた方が意味があります。確率99%の予想が外れた時は、1%の「奇跡」が起こったとは考えず、99%の確率を弾きだした前提条件の方を疑ってかかります。それが統計学の教えです。

最後に一言。この異常あり45人のうち、22人の方が精密検査に見えました。幸いこの22人の中には大腸ガンの方は0人でした。残る23人の方々に、至急精密検査を受けていただくよう、この場を借りてお願い申し上げます。


「くらしと医療」1998年11月号


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