見えることとできること

問題:豚肉入りのお好み焼きを二人で分けることになりました。ナイフの一太刀で肉も生地も正確に半分づつになるようにしたいのですが、そんなことは可能でしょうか。

これ実は数学の問題で、正解はこうです。「豚肉入りお好み焼きをそのように分ける分割線は必ず1本以上存在するが、有限回の手続きでこれを決定できるとは限らない」 つまり「在るには在るが、どこに在るかは解らない」ってこと。「できるはずだが、ちょっと無理だ」と言ってもいいでしょう。どうです、なかなか文学的でしょ。

医療生協の「7つの生活習慣」を列記できますか? 1)適正な睡眠時間をとる 2)過労を避け、充分な休養をとる 3)喫煙をしない 4)過度の飲酒をしない 5)適度の運動を定期的につづける 6)低塩分、低脂肪のバランスのよい食事をとる 7)間食せず、朝食をとる規則正しい食生活 です。どれも当たり前のことばかり。でも、だからできるとは限らない。見えることとできることとは違うのです。もちろんお医者もよ~くわかってます。「わかっちゃいるけどやめられない」のはお互い様ですからね。

今回は趣向を変えて、これを応用してお医者をやりこめてやりましょう。お医者はうるさい(そうだそうだ)。あれも駄目これも駄目じゃやってられない(そうだそうだ)。たまには一矢報いてやりましょう。

「煙草はダメってのは解ってるでしょ? 解ってるんだったら止めなさいな」
ここで、こう切り返します。
「じゃあ先生、豚肉入りお好み焼きの二等分やって見せてよ。見えることとできることは違うんですよ」
ハハハ、どうだ参ったか。
ただし、相手によっては駄目ですよ。
「全部とか完璧にとか思うから大変になっちゃうんです。できることからさっさと始めなさい」


「くらしと医療」1999年2月号


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