携帯電話再考

携帯電話は、医療機器を誤作動させることがあります。だから、病院内では使用禁止です。でも、まだまだ病院で使うひとは多いですね。これは当然、きちんと購入時に説明しないメーカーが悪い。しかし、危険性を承知しながら黙認している通産省や厚生省、そして医療機関にも責任があります。だから、今回話題にしましょう。

携帯電話で誤作動する(かも知れない)医療機器は、一般に重症患者さんに使用する機械類です。特に誤作動の報告が多いのは、輸液ポンプやシリンジポンプです。これらは非常に精密な点滴をするための道具で、劇薬を少量ずつ連続して注射するのに用いられます(少量とは数ml/時程度のオーダーです。ちなみに点滴の15滴が1mlね)。これが誤作動するとどういうことになるか、相手は重症患者、扱う薬は劇薬ですよ。くわばらくわばら。

埋め込み式心臓ペースメーカも誤動作する可能性があります。「埋め込み式心臓ペースメーカ」というのは、不整脈の治療のために、心臓を直接電気刺激するための電子機器です。大きさは直径数センチ厚さ数ミリと小型軽量で、患者さんの胸の皮下に埋めこまれています。これが誤作動したらどうなるか!心臓直結の機器ですから、言うまでもなく、不整脈発作から突然死につながりかねません。Oh my God!

電源ONの携帯電話はいつも電波を出しています。だから、通話してなくても危険です。そしてかかってきたら、ベルだろうがプルプルだろうが、アウト。電話に出なくてもアウトです! だからスイッチオフをお願いするわけです。

「携帯の電波は弱いんだから離せば大丈夫」確かにその通り。しかし、階上や階下あるいは壁の向こう側、それに前にいる人の胸の中の事情までわかりますか? だから、病院と人混みではスイッチ切ってくださいね。


「くらしと医療」1999年3月号


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