「大丈夫」は大丈夫?

先日、某テレビ局のダイオキシン報道をめぐってひと悶着ありました。

某局某番組が「所沢産野菜のダイオキシン濃度は 1グラムあたり 0.64~3.80ピコグラム。厚生省の全国調査 0~0.43ピコグラムに比べて非常に高い。WHOの摂取基準が体重1キログラムあたり一日1~4ピコグラムであるから、所沢産の最も濃度の高い野菜を数十グラム食べると基準を越えてしまう」という趣旨の報道をしました。ところが、後になって「最高濃度を示したのは野菜以外の農作物であって、野菜に関しては厚生省の調査結果と大差なかった(最高値はホウレンソウとダイコンの葉で 0.635~0.75ピコグラム)」ことが判明しました。結局、「葉っぱものとはお茶(煎茶)のことでした。ダイオキシンはお湯にはほとんど溶けない(2%程度)ので、大丈夫です」という安全宣言で幕引きとなりました。やれやれ、これでひと安心。でも、本当にそうでしょうか?

この顛末、気に入らない点が少なくとも2つあります。

まず、ホウレンソウに含まれるダイオキシンが 1グラムあたり 0.75ピコグラムならば安全かについて検証されていないということ。3.80でないから、全国平均より少し高い程度だから安全、これは論理のすりかえです。ちょこっと計算してみましょう。
ホウレンソウの一束は料理の本によると200グラム程度です。よって、一束のホウレンソウに含まれるダイオキシンは 200x0.75= 150ピコグラムとなります。体重あたりだと、私の場合で 150/70= 2.14ピコグラム。ほうら、たった一束で基準値に達してしまうじゃないですか。

次に気に入らないのが、ダイオキシンはお湯に溶けないから安全というくだり。お茶を煎れてみれば明らかなように、お茶が純粋な水溶液(茶葉の成分抽出液)となることはむしろ稀で、普通は細い茶葉が混じった懸濁液となります。つまり、茶葉そのものも飲んでいるわけ。他にも茶葉そのものを摂取する食品はたくさんあります。とすれば、水に溶けないから安全です、と宣言する神経は理解できません。ところで抹茶は大丈夫なの?

結論、「大丈夫」は全然大丈夫じゃない!「誰かさんの言うとおり」は危険極まりない!! さて、「ほっとたいむ」は大丈夫かな?


この文章の作成にあたり、株式会社環境総合研究所のサイトでの公開情報を利用させていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。


「くらしと医療」1999年4月号


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