インサイド介護保険

来年の4月から、いよいよ介護保険がはじまります。以後数回にわたって、ちょっとアブナイ介護保険入門をお届けします。

介護保険では「要介護認定」を受けなければ保険給付は受けられません(もちろん保険料は取られます:p)。要介護認定は介護保険のひとつの要です。しかし、みなさんその詳しい仕組みは殆ど御存知ないでしょう。

要介護認定は聞き取り調査に基づいて行なわれます。調査結果はまず厚生省のコンピュータにかけられて、自立、要支援、要介護1~5の7つに区分されます(一次判定)。この一次判定をもとにして、市町村の介護認定審査会で最終的な要介護度が決定されます(二次判定)。

ここまで聞けば、当然次の疑問はこうです「じゃあ、一次判定ではどういう基準で要介護度を決めるんですか?」 われらが厚生省の解答が振るっています「一次判定には全国一律の基準が用いられます。聞き取り調査の結果は、全国統一基準に基づき、コンピュータで公平かつ正確に処理されます」つまり、肝心なところはひ・み・つってわけですよ。

「コノヤロ、全国一律とかコンピュータとか言えば煙に巻けると思ってやがるな、ナメやがって」 いささか腹を立てた私は、実力行使に出ることにしました。「よし、なら総あたりで調べてやる(力まかせ攻撃 Brute Force Attackといいます)。な~に要介護認定の聞き取り調査なんてたかだか85項目のイエス・ノークエスチョンだ。2の85乗、38685626227668133590597632通りを試せばいいだけだ。コンピュータならわけないさ(*注)」

ところが、こうして私がダークサイドでちゃくちゃくと準備を進めているあいだに、なんと日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が、独自に分析してすっぱ抜いてしまいました(パチパチ)。分析には判別分析という統計理論が用いられ、要した時間は数週から数ヶ月のようです(パチパチパチ)。

あまたの非難に耐えて、これまで基準をひた隠しにしてきたわれらが更生しよう、じゃなかった厚生省も、これはさすがに堪えたようです。かくて、1999年4月吉日、ついに要介護認定の一次判定基準を公開しました(万歳万歳)。

ひた隠しにしていただけのことはあって、この基準には厚生省の意図と姿勢が見え見えです。次回以降に詳しく書くことにしましょう。

* 原作者注
1秒間に10000のデータが処理できるとしても、122671316044102年かかります(^^;。ちなみに、ビッグバンからまだ15000000000年程度しか経っておりません。


お役所パンフも結構ですが、Webでの介護保険情報の一押しは、東京都福祉機器総合センターのサイトです。また、私のサイトのインサイド介護保険も合わせて御利用ください。


「くらしと医療」1999年5月号


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