インサイド介護保険 その3

先月号で「渡る世間は...」を引き合いに出したところ、観てないひとから「じぇんじぇんわかりましぇ~ん」とのお叱りを受けました。ごもっともですので、具体的に書くことにします。

私の母なんですが、手足がきかないとかそういうのはないんです。身だしなみとかもちゃんとしてるんで、外見は全然そんな風じゃないんですけど....もの忘れがひどくて時々私や主人のこともわからなくなってしまうんです。名前や生年月日は言えるんですけど、今何月かとかは解らないみたいで....ちょっと前に食事したばかりなのに「まだ御飯食べさせてもらってない」とか....ひどい時は「どうせ私に食べさせるものなんてないんだろ」何て言うんですよ。御飯に限らず「おまえがあれを盗った」とか「いじわるして隠してるんだろう」とか....そういうことを言うんです。辛いんですよね。足はしっかりしているもんだから、徘徊っていうんですか、とにかくうろうろうろうろ....家の中はまあ仕方ないかなって諦めてるんですけど外へ出て行きたがっちゃって....ちょっと目を離すと大変なんです。近所だって一人じゃ帰ってこれませんからもう大騒ぎで....でもそうかと思えば孫が話かけているのにボーっとしているようなこともあって....火も怖いですね。鍋なんかいくつ焦がしたことか....本当に大変なんです。介護保険で少しは楽になるかと期待してます........

さて、介護保険はこのケースにどれだけ力になれるでしょうか? 本当にお気の毒ですが、上のケースの一次判定は「自立」です。つまり「保険料は取られるが何もしてもらえない」ってこと。「ひどい物忘れ」「被害的」「徘徊」「要監視」「ひとりで戻れない」「周囲への無関心」「火の不始末」これだけ問題行動があるケースですから、現場の感覚からすれば、相応の体制が取れなければ到底在宅介護は望めません。しかるに「本事例への公的な介護保障は不要」というのが更生しようの見解です。ふざけんなてめえ。

「いや、公的介護保障が不要ということじゃないでしょう。いくら厚生省、じゃなかった更生しようだってそこまで無慈悲じゃないですよ。これは判定プログラムの問題じゃないでしょうか」というのが善意の解釈です。でも、だったら本番までに早いとこ直してもらわなくっちゃね(ちなみに要介護認定は1999年10月から始まります)。そしてどこをどう直したかちゃ~んと公表してもらわないとね。おっかなくってとても任せちゃおけないんですよ、更生しようさん。


「くらしと医療」1999年7月号


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