インサイド介護保険 その5

ひきつづき、訪問調査編です。

一次判定は全国共通の調査用紙で厚生省様のコンピュータ君(コンピュータは男性名詞ね)がやります。この「全国共通」が曲者で、つまりこれは、質問項目に現われてこない個々の事情は、全く考慮されないことを意味します。更生しようの名誉のために言いますと、個々の事情が要介護認定に全く反映されないわけではなく、それは調査用紙の「特記事項」に記載され、二次判定の審査資料となるシステムになっています。しかし、要介護度の大枠を決める一次判定は至って杓子定規に行なわれます。だから注意が必要です。

最近のことや目立つことは、どうしても大きく見えますが、これはキケンです。例えば、問題行動がはなはだしい方の調査では、どうしてもその「はなはだしい問題行動」に関心が集中しがちです。しかし、こと一次判定に関しては、それはほんの2~3の質問項目に過ぎません。ことによると、その「はなはだしい問題行動」のあれこれよりも、靴下を介助なしで履けるかどうかの方が要介護度を左右するかも知れません。

常識もキケンです。「年齢相応」とか「男のひとはそれでいいの」といった常識的で有難い配慮は、コンピュータには通用しません。「歳を考えれば、このくらいできれば『自立』よね」とやっちゃうと「ウッチョー○×△□☆!?」ってなことになります。心を鬼にして、できないものはできないとせねばなりません。

見えることばかり、そして身体を動かすことばかりに注意を向けるのもキケンです。「できることはできるんだけど、危っかしいから ...」というので、つい手伝ってしまうのはもちろん介護です。しかし、直接手を出すことばかりが介護ではありません。だから注意して見ていないといけない、というのも立派な介護です。

う~ん、なかなか面倒ですが、実際はさらに複雑です。身の回りの世話等については、以上のような周囲の配慮は介護と見倣されます。しかし、徘徊や器物損壊のような問題行動は、さまざまな予防策が講じられた結果として行動そのものが認められなければ「ない」と判断されます。

要介護認定について、厚生省どんはようやく詳細な資料を一般公開しました。興味・関心ある方は原典にあたってみるのもいいでしょう。ただし、A4版で200ページ弱くらいの膨大なものですから、覚悟してください。


「くらしと医療」1999年9月号


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