映画の感想〜雑記帳
1996年以前
1996年以前に見た映像作品の感想です。( )内の年月日は記した日。
セロ弾きのゴーシュ
- 宮沢賢治原作、高畑勲監督のアニメーション。ベートーベンの「田園」を実に巧みに使い、音楽と映像の融和したほのぼのとしたメルヘンに仕上げている。ゴーシュを訪れる動物たちが、どれも楽しい。特に、たぬきが、その礼儀正しさとあいまって、たまらなくかわいく描けている。楽団のある街の風景もよい。
この作品は、スタッフが仕事の合間に、なかば趣味として創ったもので、画面から作り手の愛着が感じられ、こちらも心地良い気分になった。(94/7/8)
8 1/2
- 不思議な高揚感のある作品だ。最初は脈略のない映像で、1963年の当時としては斬新だったのかなあ程度の感想だったが、最後になってそれらの映像が一つに結びつき、人生を感じさせる構成に感心した。(94/9/17)
ベニスに死す
- マーラーをモデルにしている点も興味深かったが、なにより品のある映像の美しさが心地良かった。旋律を強調したマーラー5番の第4楽章がベニスの茫とした雰囲気にぴったりしていた。美少年に惹かれる初老の音楽家という設定から、もっとグロテスクな描写があるのかと思ったら、ずっと精神的なものであった。音楽や人生に対する意識の揺らぎが人間的な脆さと重なり、よく表現されていたと思う。マーラーに対する批判家が、ピアノをならした時にちらっと第4番の第4楽章が出てきたのに気付けて嬉しかった。昨日・今日、「8 1/2」「ベニスに死す」と人生をあぶり出すようなイタリア映画を続けて見て、なんだか寂しくなった。外ではいつの間にか虫の音が聞こえる季節になっていた。(94/9/18)
カラマーゾフの兄弟
- 俳優座、千田是也演出の「カラマーゾフの兄弟」。膨大な原作をテーマを浮き彫りにして見事にまとめ、俳優の演技もすばらしい。特にアリョーシャとスメルジャコフの演技に感心した。イワンのインテリの雰囲気も良かった。(95/1/5)
トリコロール
- 高崎映画祭の一環で、市民文化会館でキシェロフスキー監督のトリコロール三部作「青の愛」「白の愛」「赤の愛」を見る。それぞれ独立した作品だが、風景などで、ところどころ繋がりを持っている。音の使い方が巧み。陰影のある印象的な映画。(95/1/5)
トゥルー・ライズ ピアノ・レッスン
- 高崎映画祭の一環で、音楽センターで上映される「トゥルー・ライズ」と「ピアノ・レッスン」を見る。ジェームズ・キャメロン監督の映画は、理屈抜きに楽しめる。が、緊張感の抜けた007の映画のようで、少し物足りない感じ。「ピアノ・レッスン」は、独特の官能美。深い陰影のある映像が魅力的。(95/4/1)
フィールド・オヴ・ドリームス
- ケビン・コスナー主演の映画「フィールド・オヴ・ドリームス」を見る。天からの声に従ってトウモロコシ畑を野球場にした家族の、ハートウォーミングな作品。元野球選手のお医者さんが良かった。(95/6/9)
パルプ・フィクション
- タランティーノ監督。会話が楽しいトリッキーな映画。個性的なキャラクターが光っていた。(95/8/7)
耳をすませば
- 日比谷の映画館で宮崎駿の「耳をすませば」を見る。さわやかな中学生のラブストーリーだが、徹底して描き込んだ絵に時間を忘れて見入る。京王線の走る多摩の住宅街の高台からの景色がすばらしく描けている。細部の描写も見事で、特に地球屋の内部はそれだけで一つの世界になっている。ヴァイオリンの工房で、主人公たちが「カントリーロード」を合奏するシーンには涙を流した。これほど生き生きと楽器を演奏するアニメーションは初めてだ。(95/8/11)
展覧会の絵
- 手塚治虫の制作したアニメーション、「ある街角の物語」や「展覧会の絵」「Jumping」のビデオを見る。見るのは何度目かであるが、再び見ても、叙情性、音楽性には感激する。(95/8/12)
スパルタカス
- 戦闘シーンの雄大さもさることながら、ローマ側の描き方に興味が持てた。ローレンス・オリヴィエの貫禄がすばらしい。チャールズ・ロートンの執政官もよかった。(95/8/16)
ファミリー・プロット
- ヒッチコックの(松茸では「筆致刻苦」と変換される)最後の映画、「ファミリー・プロット」を見る。小粋なサスペンス。短い英語のフレーズなら、だいたい聞き取れるようになったのが嬉しい。(95/8/21)
大いなる遺産
- チャールズ・ディケンズ原作、デヴィッド・リーン監督の映画「大いなる遺産」を見る。モノクロで描かれる緊張感のある映像で、物語に自然と引き込まれていった。昔の映画は雰囲気があってほんとうにいいと思った。(95/8/30)
39階段
- ヒッチコック監督の「39階段」を見る。古い作品だが、サスペンスとユーモアは今も新鮮である。ラストのキレも良く、爽快であった。(95/9/12)
007カジノ・ロワイヤル
- デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、オーソン・ウェルズ、ウッディ・アレンなど、錚々たるスターが出ているが、内容は最高にクダラナイ。(95/9/14)
静かな生活
- 大江健三郎原作、伊丹十三監督の「静かな生活」の試写会に出る。大江健三郎氏の息子さんをモデルにした障害を持った作曲家「イ−ヨ−」とその家族をめぐるエピソ−ドをコラ−ジュにした作品。重いテ−マを軽妙に描いているのはさすが伊丹監督と思った。(95/9/18)
ルートヴィッヒ神々の黄昏
- ヴィスコンティ監督の4時間に及ぶ映画「ルートヴィッヒ神々の黄昏」をやっと見終わる。貴族趣味の横溢する重厚な映画。(95/10/1)
フルトヴェングラーと巨匠たち
- ドイツで1954年に制作されたドキュメンタリー映画。ベルリン・フィルの歴史をたどったもの。ブルーノ・ワルターやオイゲン・ヨッフム、セルジュ・チェリビダッケなどの指揮する姿が見られ、思わず見入ってしまった。フルトヴェングラーがシューベルトの「未完成交響曲」を練習する風景や、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を指揮する場面にはさすがに風格を感じさせられた。それにしても、なんと自然で温かみのある音楽なんだろう。現代の、鋭さが強調された演奏より親しみを感じる。(95/10/5)
ミスター・アーサー
- ”ニューヨーク・シティ・セレナーデ”が主題歌で、これは耳慣れた曲だった。(95/11/4)
ベートーヴェン不滅の恋
- 監督バーナード・ローズ、主演ゲイリー・オールドマン。冒頭のベートーヴェンの葬儀のシーンには、自分が2年前に歌った「ミサ・ソレムニス」が流れ、感動した。また、ベートーヴェンが第9の初演で拍手を受けるシーンでは、内側から震えがこみあげ、涙が溢れた。18世紀ヨーロッパの美しい風景を舞台にベートーヴェンのエピソードをちりばめ、迫真のドラマが心憎い演出で展開される。心底楽しめた映画であった。(95/11/4)
レッド・オクトーバーを追え
- ショーン・コネリーの演技が渋くて良い。潜水艦の技術にわくわくする。米・ソの駆け引きも面白い。楽しめる作品だった。(96/2/1)
ゲンセンカン主人
- つげ義春原作、石井監督の映画「ゲンセンカン主人」を見る。「李さん一家」「紅い花」「ゲンセンカン主人」「池袋百店会」をオムニバスで、佐野史郎が演じる。原作の雰囲気をよく伝えていた。しかし、見た後でビデオデッキがうまく動かない。テープの端がちりちりと金具に引掛かっていたんでゆく。ネジをはずして中を見ると、走行中にテープの張力がたりないようだ。しばらくしてからデッキは壊れ、修理に出すことになる。映画の影響だろうか。そういえば、ねじ式は映画になっていないのかな。(96/2/13)
カサンドラ・クロス
- コスマトス監督の「カサンドラ・クロス」を見る。確か、小学校6年生頃前橋で見た映画だったように思う。初めて映画館で見た本格的な洋画であり、そのアクションの凄さが強く印象に残っている。今見ると、スターの国際性と、人間関係を良く折り込んだ点が素晴らしいと感心したが、アクションはそれほど派手に見えない。しかし、ジュネーブを俯瞰するオープニグシーンは見事だと思った。(96/2/23)
カストラート
- 高崎映画祭の初日で、「カストラート」を見にゆく。去勢した名歌手ファリネリを描いているが、ヘンデルとの確執が興味深かった。最後にファリネリが歌うヘンデルのアリアの美しさには感激して涙を流した。(96/3/23)
甲殻機動隊
- 押井守監督の映画、「甲殻機動隊 GHOST in the Shell」を見る。ネットワーク社会を独特の映像で描いた秀作。香港や上海を思わせる、アジアの街の表現が実に見事である。サイボーグを通じて自己と非自己の関係を提示するなど、深いテーマを持っていた。(96/3/24)
ルパン三世「くたばれノストラダムス」
- 内容はたいしたことがないが、絵はよく描けている。(96/4/25)
レオン
- ゲイリー・オールドマン主演。殺し屋と少女の交流を描く映画。都会の孤独を感じる雰囲気が良い。(96/5/10)
セビリアの理髪士
- チチリア・バルトリ主演の、「セビリアの理髪士」のビデオ1巻目を見る。ロッシーニの軽快さは心地よい。(96/6/8)
蔵
- NHK制作のドラマ蔵(全6回)の最終回を見る。余韻の残る美しいドラマだった。佐穂を演じる壇ふみの演技が、とにかくいい。日本の美しさをじっくり味わえる名品。(96/5/15)
翔ぶが如く
- 昔録画した「翔ぶが如く」のビデオ1巻目を見る。島津斉昭を演じた加山雄三の渋さ、西郷吉之助、大久保一蔵を演じる西田敏行、鹿賀丈史の爽快さが心地好い。後に維新の渦中に飛込む、若き薩摩藩士たちの意気込みがよく描かれていた。司馬先生の原作を汚してはいけないと、必死に脚本を書いた小山内美江子やスタッフの熱意が伝わってくる。一柳の現代音楽によるタイトルが、格調高いロマンを盛り上げる。大河ドラマの秀作中の秀作だと思う。(96/4/30)
椿三十郎
- 黒澤明監督の映画、「椿三十郎」を見る。三船敏郎の一瞬で決まる決闘シーンも良かったが、家老の奥さんと、最後に登場する家老の雰囲気がとてもいい。(96/10/28)
赤毛のアン
- 極めて美しいアニメーション。このようなゆったりとした時の流れのあるアニメは貴重だ。全50話、すべてが素晴らしい。何度も泣いた。登場人物の死で、周囲の人生が自然にあぶり出されていく様は、アニメーションの頂点ともいえる表現。特に、アンの心理描写が秀逸。美しい自然描写と淡々とした情感の表現が見事に重なりあい、奥深い感動をおぼえる。格調高い名品。私のもっとも愛するアニメーション。(96/10/18)
コンゴ
- マイケル・クライトン原作の「コンゴ」は、いかにもハリウッド映画で、余韻があまり残らない。(96/8/23)
オリエント急行殺人事件
- 名優をずらりと揃えて競演させている。アルバート・フィニーの演技は大げさで、テレビシリーズのデビット・スーシェの方がポアロにはあっていると思う。やはり、原作の魅力は、映画では描ききれないようだ。(96/8/23)
ダイヤルMをまわせ
- ヒッチコックの映画「ダイヤルMをまわせ」をビデオで見る。スリラー・ミステリーの傑作。(96/9/29)
逃亡者
- 緊密な構成のサスペンスで、最後まで一気に見てしまった。刑事役のトミー・リー・ジョーンズの渋い演技がとても良い。最後に始めて笑うシーンが、とても爽快である。(96/10/10)
ファンタジア
- ディズニーのアニメーション、ファンタジアを見る。イマジネーションの豊かさと丁寧な作りに、感動する。(96/11/02)
2001年宇宙の旅
- シュトラウスのワルツにのって、宇宙船が飛行するシーンが美しい。本当に、見事なデザインだ。(96/11/23)
ホーム・アローン
- コメディだが、家族愛をしっかりと盛り込んでいるところに、アメリカ映画の優れた面が出ている。(96/12/23)
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